言葉のランドスケープ

日々のときめき・きらめきを見つめて

時間は優しく流れてゆくから

焦ったり、粗末にしたなぁと反省したり、未だに時間との上手な付き合い方を掴めてはいませんが。

たとえ幻想だとしたって、人間に時間の概念があって良かった!と心から思えた話。

* *

その①
先日古本屋さんをうろついていたら、20代半ばに読んだエッセイ本を発見して、わぁ懐かしい!とページをめくっていたら、ある一篇の会話文に、目が釘づけになった。

以前に読んだ時は、文中のふたりが交わす言葉の真意をよく汲み取れなかったのに、分からないことが何だか悔しくて、自分の内面だけでの話なのに、背伸びして、理解している体にした覚えがある。
それらの部分の言葉達を今読んだなら、心へ自然と染み入るように、自分へと入ってゆくのだ。

そのエッセイの内容は
自死を選んだ友人が生前に発していた危うさに、気がつけなかったこと』を中心に書かれたもので、前回購読時から今日まで、というより人生において、わたし自身、似た境遇に置かれたことなんてない。

だからこそ、似たような追体験をしなくとも、平凡なことを追って追われての日常の中でも、やはり感性は瑞々しさを目指して育まれ続け、他の人の人生に寄り添える力も磨かれてゆくのだなと、人間の奥深さを、また思い知らされてしまった!

自分を大きく変化させるためには、大きなタイトルが付くような出来事に加わらなくちゃいけない、みたいな前提があるわたしには、すごく痺れる体験だった。

* *

その②
6年ほど前にFacebookを始めた際に、繋がるつもりも無いのに、興味心から中学時代の友人を、検索にかけてしまったことがある。

部活が同じだったCちゃんを見つけて、プロフィールを覗いたところ、勤務先が国内外で有名な建築事務所になっているではないか。
『そういや昔から、インテリアに興味あるって話していたなぁ。努力の積み重ねが、今のプロフィール欄に反映されるんだなぁ・・・』

妬んだりは無いけれど、彼女に比べて、自分はしたい事もハッキリしない、何かを目指しているわけでもないなぁと愕然として、立ち直るのにずいぶん時間が掛かった事を覚えている。
(わたし自身、美大で建築に関することを学んでいたのも、拍車が掛かったように思う)

それから彼女以外にも、他の人の様子が気になってばかりと、自分へいい影響を及ぼせていないと思い、結局入会から1年後に、Facebookは退会しました。

時を経て、今年の夏。
事情があってFacebookを再開することになり(よせばいいのに)ふと、また検索をかけてみたら、なんとCちゃん、建築事務所を退職後、今はニューヨークでジュエリーデザインの仕事をしているそうな。

アップされていた日常写真1枚ごとが華やかで、凄いなぁと関心しつつ、一方の自分を見つめてみたら、海外で力を発揮できるものなんて培えてないなと、暗い方に巻かれてゆくばかり。

その頃は仕事をしていたので、昼休憩の時に、職場の先輩にそのボヤキを聞いてもらっていた。

『そっか~ジュエリーって凄いね!でもアリサさんだって納得した道を進んでいて、いま幸せでしょう?』

そりゃそうです。どれ程に大切な人と、巡り合わせてもらえたか。
分かっていたけど、その大切な内の1人のあなたの言葉に力添えを戴いて、手元にある幸福を、より確実にしたかったんだと思います。

それから数日後。

その先輩から『気持ち、落ち着いた?その、ニューヨークの』と話しかけられて、ポカンと間を置いてしまった。
『え?ニューヨーク?・・・あぁそういやそんなこと、ぼやいてましたね!』

気持ちの落とし所を見つけたからとは言え、数日前の葛藤を失念していたことに我ながら驚き、先輩には、なんとも苦い顔をさせる始末だった。

6年前の時は、あんなに尾を引いていたのになぁ。
『一見変わりないようで、実は進歩している』そんな絶妙さを味わいたいがために、わたしは緩やかに変わることを望んでいたりするのかな。
そうだとしたら、まさに今の悩みや葛藤は、今の自分で了承した分だけを引き受けているのかと思ったら、なんだかおかしくなった。

本当には安定しかない土台の上で、きゃーきゃー言いながら感情を跳ねさせ、騒ぎ、時にタイムラグも取り入れながら、時空間上で存分に遊べる間が、人生なのだなぁ。

だって親切な天使が現れて
『このクッキーを食べたら、人と自分を比べなくなるよ(^^』と、差し出してくれたとしても
『ううん、いい。自分をみじめに思うことがあっても、その中で見たいものが、まだあるみたいだから』と、丁重にお断りするだろうと思うもの。

総括すると、宗教家の人達が口にする
『みんな救われている』の格言は本当めいているなぁと。

そして遠く離れたCちゃんの活躍によって、思いがけないギフトを受け取れました。
ありがとう、どうぞ輝き続けて。

Arisa